12月の定例会まとめ/ニュースの目(31)来年の景気の鍵、『ベースアップ』はどこまで広がるか?
石川直子です
11月29日より2週にわたり、東村山市の消費生活講座を担当してまいりました。
今年度は参加者全員が小さな子供をもつママたち。社会環境の激変期にあって家計管理や教育投資・住宅投資について従来の考え方では対応できない、ではどのように考えればよいのか。
短い時間でしたが、ママたちの関心の高さが伝わってきました。具体的な対応策について継続して学ぶ機会があれば、と強く思います。市の講座担当の方々も継続学習の必要性を感じていらっしゃるようです。是非に、とお願いしてきました。
また、12月14日より2週にわたり、福生市の公民館講座を担当される奥田先生のお手伝いをしてまいりました。こちらは「後半人生の経済生活とリスク・マネジメント」ということでベテランママが中心。
しかし、「いわゆる『常識』に凝り固まっている世代。女性だから、年だから、などと引込んでいてはダメ!」と78歳の奥田先生。労働経済学から心理学、医学、恋愛学(?)等々、多岐にわたる先生の檄とも云えるお話に、最初はビックリされた様子の皆さんでしたが、最後には「もっと勉強したい」との声が多く聞かれました。
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2013/12/7『ニュースの目(31)』-日本経済新聞11月21日~12月6日朝・夕刊より抜粋-
『社会保障』改革の工程を示す『プログラム法』が5日に成立
- 医療費自己負担の引き上げは、新たに70歳になる人
- この改革でも2025年(団塊世代が75歳以上になる)に社会保障給付は150兆円になる見通し
- 「年金制度」の見直しは腰砕けに
来年の景気の鍵、『ベースアップ』はどこまで広がるか?
- 連合、ベア1%以上要求を5年ぶり正式決定
- 鉄鋼など基幹労働組合、6年ぶり統一要求
- 私鉄総連は3,700円、トヨタ労連も加盟組合にベア要求促す
- 実感なき回復、賃上げ遠く(「大機小機」12/3)
- 「一律ベア」古い考え(「変わるか賃金」12/4)
トピックス
『改正労働法』のABC
◆勤労者に関連の深い『労働法』が2012年に相次いで改正、公布されている。その概要は以下のとおり。
1)『労働契約法』
①改正の背景
②施行日
- 2013年4月1日(一部は公布日2012年8月10日より施行)
③改正のポイント
a)『有期労働契約』の『定めがない労働契約』への転換(『無期雇用転換申込制度』)
- 『有期労働契約』が5年を超えて反復更新される場合、労働者の申込みにより、『無期労働契約』に転換される。
- 無期に転換された場合、別段の取り決めがない限り、『労働条件』は従前と同じ。
b)『雇止め法理』の法定化
- 『雇止め』が客観的・合理的な理由を欠き、社会通念上、相当であると認められない時は、『有期労働契約』が更新されたものとみなす。
c)『期間の定め』があることによる『不合理な労働条件』の禁止
- 『無期契約労働者』と『労働契約』が相違し、不合理と認められるものであってはならない。
2)『労働者派遣法』
①改正の背景
- これまでは『自由化』を基調としたが、非正規労働者の比率が35.5%(2012/11)にも達し、この雇用が不安定になれば社会的不安につながりかねない。
②施行日
- 2012年10月1日
③改正のポイント
a)事業規制の強化
- 日雇派遣(日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止(適正な雇用管理に支障を及ぼす恐れがないと認められる業務の場合、雇用機会の確保が特に困難な場合等は例外)
- グループ企業内派遣の8割規制
- 離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止
b)『派遣労働者』の無期雇用化や待遇の改善
- 派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、無期雇用への転換推進措置を努力義務化
- 派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮することを義務化
- 派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)等の情報公開を義務化
- 雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、1人当たりの派遣料金の額を明示することを義務化
- 労働者派遣契約の解除の際の、派遣元事業主および派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化
c)違法派遣に対する迅速・適切な対処
- 違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす
- 処分逃れを防止するため労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備
3)『高年齢者雇用安定法』
①改正の背景
- 『公的年金』の維持が難しく、その対応の一つとして『支給年齢の引上げ』に対応するため。
②施行日
- 2013年4月1日
③改正のポイント
- 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止
- 継続雇用制度の対象者を雇用する企業の範囲の拡大
- 義務違反の企業に対する公表規定の導入
- 高年齢者雇用確保措置の実施および運用に関する指針の策定
以上
11月の定例会まとめ/ニュースの目(30)アメリカの株価はバブルか?
石川直子です。
ようやく11月の内容をまとめました。
毎回、定例会翌日までのアップを目指しているにもかかわらず、このありさまです。。。
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13/11/23『ニュースの目(30)』―日本経済新聞10月17日~11月20日朝・夕刊より抜粋
ダウ工業30種は史上最高値の更新続き
- ニューヨーク・ダウは11月8~11日に続き、13~18日と2営業日、4営業日ベースで、連続して史上最高値を更新した。
- ニューヨーク時間13日、イエレン次期FRB議長が、議会公聴会で『長期的で強力な金融緩和の必要性』を強調、アメリカの『金融緩和の出口』についても「特定の時期は決めていない」と発言したのが大きなきっかけとなった。
- ファンダメンタルズでも、7~9月のGDP成長率は2.8%(速報値)増と、市場予想の1.9%前後を上回っている。
- ただ、強気一辺倒ばかりではない。
①アメリカ地方銀行は、“企業は融資を増やせるほど強くはないし、景気回復を支えて
きた住宅投資にも鈍化の気配が出てきた”(10/30夕 ウォール街ラウンドアップ)
②二大投資家のフィンク氏“極端な緩和策を放置し続ければ市場でバブルが発生する”、
ダリオ氏は“上値余地は限られている”と警戒(11/13夕 ウォール街ラウンドアップ)
☛ただし、どういう意図で発言しているかはわからない。
③“FRBの資産は買取継続にはすでに限界に近く、デリバティブや社債などの
信用バブルも問題”(10/24夕「ウォール街ラウンドアップ」)
<参考>コモン・エクスポージャー
多くの投資家の行動が共通したものである時、思わぬ『増幅効果』をもたらす。
日経平均も11月19日には、一時16,000円台乗せ
- 中身は外国人投資家、先物主導の相場(11/14)
トピックス
- 非課税の私的年金 創設(11/9)
☛NISAは何だったのか??
『日本の国債』はどうなるのか
1)日本の『公的債務』は増加の一途
a)最大の増加の理由は『高齢化のスピード>経済成長率』による『社会保障費』の
継続的増大。
(注)2020年頃には労働者1人が65歳以上の高齢者1人を支える予想。
⇒『消費税』を2014年5%→8%、2015年8%→10%に引き上げ予定。
ただし、当面の「止血剤」に過ぎないと云う見方が多い。
⇒『消費税1%』の財源増は2.5兆円と予想されている。今後10年間で
『社会保障費』約10兆円、『国債利払費』約9兆円の増加が予想されている。
b)アトランタ連銀ブラウン氏とカリフォルニア大学ジョーンズ教授の推計
シナリオ1:社会保障費1兆円増を放置し、2017年に消費税を一挙に引き上げる
場合の必要消費税率33%
シナリオ2:増税を2017年から2022年に5年間遅らせた場合の必要消費税率37.5%
(1年遅らせるごとに消費税は1%上昇)
シナリオ3:2%のインフレが実現し2017年の消費税を上げる場合、
必要消費税率は25.5%
◆提案された『包括的改革プラン』
イ)2%のインフレ率を実現する
ロ)高齢者の医療費窓口負担を2割とする
ハ)年金給付は現役世代年収の半額保証を外す
二)政府の経常経費を1%削減する
⇒それでも『最終消費税率』は32%必要
2)日本で『国債金利』が上がらない(価格が下がらない)のはなぜか?
- 公的債務が増加すると『デフォルト・リスク』が高まり、『金利』が上昇するのが一般的である。『公的債務(国債残高)/GDP』比率は、『リスク・プレミアム』の決定要因の一つである。
- 日本で『金利』が上がらないのは、一般的には以下の理由が挙げられている。
①日本国債の92%は国内で消化されている(『コモン・エクスポージャー』に
注意が必要である)
②日本の『消費税率』は国際的に低く、増税の余地がある
③国の資産がある(国のB/Sは2011年末で『負債(うち公債)1,082(791)兆円』
『資産629兆円』)
④高齢化と人口減少が進む国は『経済成長』が低水準となり、したがって『金利』も
上がらない
(注)『ロゴフ仮説』
政府債務のGDP比がベキ値90%を上回れば、経済成長率は大きく低下する。
3)『政府債務(国債)』が発散するかどうかの検証法
- 『政府債務(国債)』が返済不可能になるかどうかの検証方法に絶対的なものはないが、以下の計算式がよく用いられる。
基礎的財政収支黒字の対GDP比 ≧ 政府純債務の対GDP比 ×(国債利回り-経済成長率)
◆具体例
①ギリシャの場合
政府純債務の対GDP比・・・・約130%
国債利回り ・・・・20%
経済成長率 ・・・・1%
上式から 130% ×(20%-1%)=24.7%
⇒基礎的財政収支黒字の対GDP比25%を上回る必要があった。
②日本の場合(2013年)
政府純債務の対GDP比・・・・144.3%(含む地方債務)
国債利回り ・・・・ 0.79%
経済成長率 ・・・・ 0.4%
上式から 144.3% ×(0.79%-0.4%)=0.563%
⇒基礎的財政収支黒字の対GDP比0.59%にする必要がある。
- 『計算式』から明らかなように、『経済成長率』が『国債利回り(長期金利)』を上回ることが重要となる。
<参考>2013年8月末の政府試算
『地方債務』を含めた『基礎的財政収支の対GDP比』は
2010年度 -6.7%(国だけだと7.6%)
2015年度 -2.6~-3.2%
2020年度 -1.4~-2.8%
になると試算している。
4)日本の『出口戦略』をどうするのか?
- 『出口戦略』としては、以下の2つが考えられる。
①『準備預金』の『金利』を引き上げる。
②『国債』の『売りオペレーション』
⇒どちらも『金利上昇』を招いてしまう。
- 日銀の2013年4月の決定は・・・
マネタリーベース 2013年末 200兆円(うち長期国債 140兆円)
2014年末 270兆円(うち長期国債 190兆円)
買いオペレーション 年約50兆円に相当する量を買い入れる予定
↓ ↓ ↓
計画通りだと、日銀の『長期国債保有量』は2012年末の89兆円が
2013年末 140兆円、2014年末 190兆円になる計算
↓ ↓ ↓
予定通り実行しないと
・『長期国債』の価格下落(長期金利の上昇)
予定通り実行すると
・『出口戦略』が極めて難しくなる
- 政府の重要な役割は、こうした実情を国民に説明(まず、『国家ビジョン』を明確にすること)することである。
<参考①>公債残高の推移(国税庁ホームページ)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/gakushu/hatten/img/ill10_02.jpg
<参考②>基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の推移(財務省ホームページ)
以上