東村山市 消費生活講座『子育てパパとママの家庭経済教室』のお知らせ
10月の定例会まとめ/ニュースの目(29)アベノミクス、第二段ロケットは点火できるのか?
石川直子です。
LFP研究会の顧問であり、私たちの金融・経済の先生である奥田啓介先生は、2011年まで10年以上、現在四谷にある投資信託会社で毎週金曜日の勉強会の講師を続けておられました。
投資信託会社での勉強会と云えば、ファンド販売目的のセミナーが一般的です。しかし、先生の金曜勉強会は投信会社の中にあって全く独立した、あくまで個人投資家の、家計のための金融や経済の基礎的知識を学ぶ内容で、参加者は年々増え、遠くは北海道から飛行機で通ってこられる方もいました。
そのような勉強会を継続して、しかも無料で開催しているところは、おそらく他には無かったでしょう。しかし、先生はさらに、平日の午後では働き盛りの世代が参加できない、これからの若い人たちにこそこうした基礎的知識が必要だ、とのお考えでした。そこで、先生が引退される前の3年間は、私もお手伝いして月2回の土曜勉強会も併設されたのでした。
先生が引退された後、勉強会の生徒さん達から再開のご要望が途切れることがありませんでした。体調のことなど考慮して辞退されていた先生でしたが、ついに2年7カ月ぶりに土曜勉強会が再開されることになりました。生徒さん達の粘り勝ちです。
月1回の開催ですが、私もお手伝いいたします。懐かしい顔、新しい顔を合わせて、皆さんと勉強する時間が今から楽しみです。
★
『ニュースの目(29)』ー日本経済新聞9月13日~10月16日朝・夕刊より抜粋
アベノミクス、第二段ロケットは点火できるのか?
1)第185臨時国会で、首相所信表明(10/15夕)
2)『産業競争力強化法案』を国会提出(10/10)
- 『規制改革』で経済を活性化し、『需要の創出』を促す。
3)『社会保障制度改革プログラム法案』決定(10/16)
- ただし、『年金改革』は先送り。
アメリカ、『債務上限引上げ』は『暫定案』で詰め
- 来年2月までは一時的に『債務上限』を引上げで議会調整(10/16)
トピックス
1)ノーベル経済学賞にシラー氏ら(10/15夕)
- 米エール大学ロバート・シラー教授、米シカゴ大学ユージン・ファーマ教授と同大ラース・ハンセン教授は共同受賞。
- 資産価格の分析と云う点では共通するものの、行動経済学が専門のシラー氏と、市場合理性を強調するファーマ氏の立場は大きく異なる。
2)大機小機『よい不平等のススメ』(9/22)
- 行き過ぎた一律・平等は先進国型の価値創造には足かせ。
- 平等にこだわると、すべて二流の凡庸な国になる。
『国家財政』ABC-予算編-
1)『予算制度』
- 憲法第7章『財政』に『基本原則』の定めがある。そのポイントは、
①事前決議の原則・・・予算執行前に国会の決議を受ける
②総計予算主義の原則・・・国の収入・支出は全額『予算』に計上する
③財政状況の国会および国民に対する報告
・・・内閣は少なくとも毎年一回、国の財政状況を国会及び国民に報告しなければならない
2)『予算制度』の概要
①会計年度・・・通例一年。『予算』は年度の開始前も後にも使用できない
(注)▶『予算の単年度主義』
・毎会計年度ごとに作成、国会の決議を経る。
▶『歳入・歳出均衡の原則』
・会計年度の「歳出」は、当該会計年度の収入で賄う。
・ただし、以下の例外が認められている。
a)『歳出予算の繰越し』
・ただし、明確な理由が必要
b)『過年度収入及び過年度支出』
・最長2カ月の『出納整理期間』が認められる
②『予算』の内容
- 国会に提出される『予算』は以下の5項目から成り立っている。
a)『予算総則』・・・総括的な事項の他、『公債発行限度額』、『一時借入金の最高額』等
b)『歳入・歳出予算』・・・『予算』の本体
c)『継続費』・・・工事等で複数会計年度を要する場合は、その『経費総額』及び
『年割額(毎年度の支出見積額)』
d)『繰越明許費』・・・歳出予算のうち、予算成立後の事由により年度内に「支出」が
終わらないものは、国会の決議を経て翌年度に繰越し使用ができる
e)『国庫債務負担行為』・・・国が契約などで債務を負担する場合には、『継続費』に
ならない場合は、あらかじめ『予算』として国会の決議が必要となる
3)『予算』の種類
- 以下の3つから成り立っている。
①一般会計
・国の一般の「歳入・歳出」を経理する会計。通常、『予算』はこれを指す。
②特別会計
・国が特定の事業を行なう場合、及び、特定の資金を保有・運用する場合、
その他特定の収入をもって特定の歳出に充てる場合、『法律』をもって
『特別会計』を設ける。2006年度の31から2011年度には17に減少している。
特別会計一覧 |
|
・ 交付税及び譲与税配布金特別会計(内閣府、総務省及び財務省) ・ 国債整理基金特別会計(財務省) ・ 財政投融資特別会計(財務省及び国土交通省) ・ エネルギー対策特別会計(文部科学省、経済産業省及び環境省) ・ 労働保険特別会計(厚生労働省) ・ 年金特別会計(厚生労働省) |
・ 食糧安定供給特別会計(農林水産省) ・ 農業共済再保険特別会計(農林水産省) ・ 国有林野事業特別会計(農林水産省) ・ 特許特別会計(経済産業省) ・ 社会資本整備事業特別会計(国土交通省) ・ 自動車安全特別会計(国土交通省) |
③政府関係機関予算
・特別の法律によって設立された『法人』で、その「資本金」が全額政府が
出資する機関の予算で、国会の決議を要する。
政府関係機関一覧 |
||
機関名 |
設立年 |
設立目的 |
株式会社日本政策金融公庫
|
昭47 平20
平20
|
沖縄開発のための資金供給 我が国及び国際経済社会の健全な発展並びに国民生活の向上に寄与するための資金の供給 開発途上地域の政府等に対する有償の資金供与による協力の実施等
|
<追加解説ー1>
- 以上の3つの予算は、単純に並立しているわけではなく、各予算相互間の出し入れがある。
- この重複分を差し引いた『予算の総計』を『純計』と呼ぶ。
- また予算にはイ)本予算、ロ)暫定予算、ハ)補正予算がある。
<追加解説ー2>
- 金額が大きく、『第二の予算』などと呼ばれる。
- 原則的には、『政府保証』の付いた『財投機関債(金額、市中発行)』で集めた資金を原資に、中小企業等への「低利融資」等が行なわれる。
- 政府は『財政投融資計画』を作成、国会の承認を得て、決定される。
(注)『財投債』と『財投機関債』
『財投債』・・・『財政投融資特別会計国債』の略で、『財政投融資』の資金調達の
ために発行される『政府保証債』
『財投機関債』・・・『財投機関』が個別に発行する政府保証のない債券
4)『予算』の『区分』及び『移用・流用』
①『区分』・・・『項』と『目』
『項』・・・『立法科目』と呼ばれ、国会の決議が必要
『目』・・・『行政科目』と呼ばれ、行政面の規制に委ねられている
②『移用・流用』・・・財務大臣の承認があれば認められる
『移用』・・・経費の性質が類似または相互関連の強い『項目』間での融通
『流用』・・・同一『項目』間の『目』と『目』の経費の融通
5)『予算』の『編成』、『執行』、『決算』
①『編成』・・・提出できるのは『内閣』だけで、年末までに『財務省』がとりまとめ、
翌年の『通常国会』に提出される。但し、『国会』、『会計検査院』、
『裁判所』の『予算』は、独立性を保つため、『財政法上特別な手続き』
が定められている。
(注)『予算先議権』・・・衆議院にある。
②『執行』・・・内閣から『各省庁の長』に配賦される。各『省庁長官』は四半期ごとに
『支払計画書』を作成、財務大臣の認可を得て実行される支払いは『支出官』
が『日銀』宛に『小切手』を振り出すことで行なわれる。
③『決算』・・・各『省庁長官』が『歳入・歳出の決算書』を作成、7月31日までに財務大臣に
提出。『内閣』から『会計検査院』に送付され、国会の審議を受ける。
(注)『剰余金(『決算上の剰余金』と呼ばれる)』の処理
・・・通常は翌年度の『歳入』に繰り入れられる。
6)国の『歳入』の概要
①収入の種類
- 以下の6つに区分される
a)租税及び印紙税収入
b)官業益金及び官業収入
c)政府資産整理収入
d)雑収入
e)公債金
f)前年度剰余金受入
②『租税』
a)『直接税』と『間接税』がある。
国税の税目 |
||||
所得課税 |
所得税(直接税) 法人税(直接税) 地方法人特別税(直接税) |
消費課税 |
消費税 酒税 たばこ税 たばこ特別税 |
航空機燃料税 石油石炭税 電源開発促進税 関税 とん税 特別とん税 |
資産課税など |
相続税・贈与税(直接税) 登録免許税 印紙税 |
(注)『租税特別措置法』
・特定の政策目的のため『法律』により、『減税・課税の繰延べ』あるいは
『増税』の措置を取る裏付けとなる法律
b)『その他の収入』
・官業益金(「特別会計」の利益金)と官業収入(「一般会計」の事業収入)
c)『公債金」
<参考>国債の種類
|
種類 |
概要 |
備考 |
償還期限 |
超長期国債
長期国債 中期国債
短期国債 政府短期証券 財務省証券 外国為替資金証券 石油証券 食糧証券 個人向け国債
物価連動国債 |
償還期限15年、20年、30年、40年
償還期限10年 償還期限2年、5年
償還期限1年、6カ月 償還期限2カ月、3カ月、6カ月
償還期限10年、5年、3年
償還期限10年 |
利付国債(40年もの) 利付国債(30年もの) 利付国債(20年もの) 変動利付国債(15年もの) 利付国債(10年もの) 利付国債(5年もの) 利付国債(2年もの) 国庫短期証券(T-Bill:Treasury Discount Bills)
変動利付国債(10年もの) 固定利付国債(5年もの) 固定利付国債(3年もの) 物価連動国債(10年もの) |
債券形態 |
利付国債 割引国債
割賦償還制国債 |
償還期限までに定期的に利払いを約束 償還期限までの利子相当額があらかじめ額面金額から差し引かれて発行 元利金の償還を割賦の方法で行なう |
年2回払い
遺族国庫債券等 |
<追加説明>『基礎的財政収支(プライマリー・バランス)』
- 一般的な『財政収支』は・・・
『税収・税外収入』-『債務償還費を除く歳出』=『債務償還費』-『国債発行額』
- 『プライマリー・バランス』は・・・
『税収・税外収入』-(『歳出総額』-『国債費』)=『国債費』-『国債発行額』
=『財政支出』+『利払費等』
【参考資料】
http://www.stat.go.jp/data/nihon/pdf/n0500000.pdf
以上
9月の定例会まとめ/ニュースの目(28)『予算の時期』が始まる
石川直子です。
今回から3回にわたり、『国家予算』について勉強します。とかく「国家予算について知ったからって、だから何なの?」と思われがちですが、そうではなく、「だから家計はどう行動すればよいのか」を考えることが重要であり、私たち講師はそこをお話しなければなりません。
私が講師を担当する稲城のママグループ「笑ライフ」勉強会では今年度『家計における資産運用』をテーマに勉強していますが、『国家予算』から浮かび上がる将来のさまざまな問題、例えば、年金の受給年齢のさらなる引き上げや医療・介護費用負担増、増税などへの対策と併せて、子育て世代がいかに効率的に生活資源の増加をはかっていくのか。不安定な将来を予測するならば、ここしばらくの家計の国債投資は控えざるを得ないが、かといってリスクの高い投資はなお控えたいし、銀行での流動性確保も得策とは云えず、MMFなどで流動性確保か、などなど頭の中を考えがぐるぐる廻ります。
しかし、いずれにしろ、家計の基本的考え方=ライフ・ファイナンシャル・プランニングが個々の家計の土台となるのだということ。そこをしっかりお伝えすることが大事なんだとあらためて思った次第です。
★
『ニュースの目(28)』-日本経済新聞8月12日~9月12日朝・夕刊より抜粋-
『予算の時期』が始まる
1)『概算要求総額』は99.2兆円、『優先課題推進枠』は3.5兆円(8/30)
2)『中期財政計画』も提示(8/7夕)
- 目標は15年度までに国・地方の『基礎的収支』の赤字半減
- 新規国債発行額は43兆円以下に抑える
- 『年金』を含め、痛み伴う改革は先送り(8/3)
3)『増税』判断は10月初め
- G20(8/6)でも消費増税言及せず
4)社会保障給付は先行して削減へ
- 特養入居基準厳しく-「要介護3」以上に(8/14)
- 大病院、初診料1万円を基準に値上げ検討(8/30)
- 『高額療養費』見直し 所得に応じ負担増徹底(9/10)
- 高所得者の介護保険の自己負担を15年度から見直しへ(8/4)
5)15年度の『財政健全化目標』達成には5兆円の増税必要(6/22)
- 『消費増税』でも20年年度の黒字困難(8/1夕)
6)『大機小機』:『財政敗戦』を避けるために(9/7)
- 成長促進は重要だが、『増税』と厳しい『歳出抑制』というパーツもなければ『財政敗戦』は避けられない。
- 『財政再建』が必要なのは、行き詰った時に真っ先に被害を受けるのは『国民』だからだ。
トピックス
『国家財政』ABC-基礎編ー
1)『財政』とは
- 政府の経済活動の収支。租税や公債などで民間から資金を調達、政府はこれを元手に国民生活の基盤となる諸条件の活動を行なっている。
(注)1970年代から「大きな政府」に対する疑問が生まれ、「小さな政府」を目指す
動きが現れ出した。
2)『財政』の三機能
①資産配分機能 ②所得再配分機能 ③経済の安定化機能
(注)『財政』は以下の二つを通して経済を安定化することができると言われている。
a)自動安定化機能(ビルト・イン・スタビライザー)
b)裁量的財政政策(フィスカル・ポリシー)
・・・不況期に「財政支出」を拡大したり、「減税」で景気を刺激する
3)『財政学』の歴史
①『官房学』・・・17~18世紀の『重商主義時代』に王室財政の収入増と管理のための技術論
②古典派財政学・・・『古典派経済学(自由な経済活動を主張)』の発展と共に「国家の機能」
を以下の3つに限定すべきとした。
③19世紀半頃から・・・『所得格差』の拡大と共に、『福祉国家』への要請が高まり、
『財政』の役割も拡大
④現代・・・R.A.マスグレイブの『財政理論』(1959年)で、一応の総括を見たと言われ、
数理的・統計的手法が導入され理論の精緻化が進んだ。
4)『財政赤字』の問題点
①財政の硬直化・・・「利払い」等の増大で、「政策的経費」を減少させる
②財政の「持続可能性(サスティナビリティ)」に対する信任の喪失
③「負担」の先送りによる世代間の不公平の拡大
5)『租税』
①『租税』とは
- 政府が『歳入の調達』を目標に、強制的に、何ら特別の対価なしに、他の経済主体から徴収する「貨幣」
②『租税』の種類
a)『直接税』と『間接税』
(注)『直接税』・・・法律上の「納税義務者」が税の負担者となる税
b)『従量税』と『従価税』
c)『国税』と『地方税』
(注)『租税』の性質
『直接税』・・・累進課税が可能(垂直的公平)だが、脱税や所得隠し、
景気に左右される、などの欠点がある
『間接税』・・・公平で景気に左右されないが、『逆進性』の欠点がある
③『租税負担率』と『国民負担率』
『租税負担率』・・・『国民所得』に対する『国税』と『地方税』を合わせた『租税収入』の割合
『国民負担率』・・・『租税負担率』に『社会保障負担率』を加えたもの
『潜在的国民負担率』・・・『国民負担率』+『財政赤字分』
<参考>財務省ホームページより
6)『財政健全化』への努力
- 橋本内閣(1996~1998年)
『財政構造改革法』・・・急激な景気変動と金融システムの不安で凍結
- 小泉内閣(2001~2006年)
『聖域なき構造改革』・・・歳出削減は進んだが、「社会保障費」が急増、
改革は捗々しくなかった。
2006年『経済財政運営と構造改革に関する基本方針』を閣議決定
・・・持続可能な財政制度を確立するため、「歳出削減」を徹底した上で、
それでも対応できない場合は「歳入改革」で対応しようとした
『歳出・歳入一体改革」が取り決められた。
- 2009年・・・「歳出改革」の取り組みを継続すると同時に、国地方の大胆な「行政改革」
を進めることになった。
- 2010年
『財政運営戦略』を閣議決定、以下の目標が決定された
①国・地方の「プライマリーバランス赤字」を遅くても2015年度までに
「対GDP比」で半減、2020年度までに黒字化させる。
②2021年度以降において、国・地方の「公債残高」を「対GDP比」で
安定的に低下させる。
③2011年度から13年度を対象とする以下の目標の『中期財政フレーム』を策定、
イ)2011年度予算で新規国債発行は約44兆円を上回らないものとする
ロ)「基礎的財政収支対象経費」を71兆円以下に、「国債発行額」を
約44兆円以下に抑える
- 2013年8月・・・『中期財政計画』を策定
『中期財政計画』のポイント
①2015年度の財政赤字半減目標を維持
②新規国債発行額は14、15年度に前年度を上回らないよう努力
③地方の一般財源総額は14、15年度に13年度と同水準を確保
④20年度の財政赤字解消は税収増などで実現
⑤経済の重大な危機で目標達成が難しい場合は、機動的な財政政策を実施
7)『消費税』の歴史
a)歴史
1989年・・・『消費型付加価値税』として3%の『消費税』を導入、代わりに『物品税』
は廃止
野党四会派『消費税廃止法案』を提出
1990年・・・政府『消費税見直し法案』を提出(2月)
野党、『消費税廃止法案』提出(4月)
1991年・・・与野党の合意成立
1997年・・・税率を5%に引き上げ
b)「消費税」が必要とされた背景
イ)国民所得が上昇、『シャウプ税制(直接税中心で累進度がきつい)』が合わなく
なった。
ロ)「少子高齢化社会」の到来をひかえ、『社会保障』を賄う安定的な「歳入構造」が
必要と考えられた。
ハ)これまでの『消費課税』は奢侈性・便益性に着目、「個別間接税」の『物品税』で
あり、色々なアンバランスがあった。
c)当時、国会で議論されたこと
・「逆進性」、「低所得者」の負担
・事業者が、消費者に『消費税』の転嫁ができるか
・事業者の事務負担
・「便乗値上げ」が生じないか
・「景気」への影響
以上