ミライカケイ

LFP研究会メンバーがライフプランを軸足に綴る研究日誌(旧ブログ→http://lfp.jugem.jp/)

9月の定例会まとめ/ニュースの目(28)『予算の時期』が始まる

石川直子です。

今回から3回にわたり、『国家予算』について勉強します。とかく「国家予算について知ったからって、だから何なの?」と思われがちですが、そうではなく、「だから家計はどう行動すればよいのか」を考えることが重要であり、私たち講師はそこをお話しなければなりません。

私が講師を担当する稲城のママグループ「笑ライフ」勉強会では今年度『家計における資産運用』をテーマに勉強していますが、『国家予算』から浮かび上がる将来のさまざまな問題、例えば、年金の受給年齢のさらなる引き上げや医療・介護費用負担増、増税などへの対策と併せて、子育て世代がいかに効率的に生活資源の増加をはかっていくのか。不安定な将来を予測するならば、ここしばらくの家計の国債投資は控えざるを得ないが、かといってリスクの高い投資はなお控えたいし、銀行での流動性確保も得策とは云えず、MMFなどで流動性確保か、などなど頭の中を考えがぐるぐる廻ります。

しかし、いずれにしろ、家計の基本的考え方=ライフ・ファイナンシャル・プランニングが個々の家計の土台となるのだということ。そこをしっかりお伝えすることが大事なんだとあらためて思った次第です。

                

 

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『ニュースの目(28)』-日本経済新聞8月12日~9月12日朝・夕刊より抜粋-

『予算の時期』が始まる

1)『概算要求総額』は99.2兆円、『優先課題推進枠』は3.5兆円(8/30)

  • 財務省『国債費』前年度比14%増の25.3兆円を要求
  • 厚生労働省、前年度当初予算比3.8%増の30兆5,640億円要求

2)『中期財政計画』も提示(8/7夕)

  • 目標は15年度までに国・地方の『基礎的収支』の赤字半減
  • 新規国債発行額は43兆円以下に抑える
  • 『年金』を含め、痛み伴う改革は先送り(8/3)

3)『増税』判断は10月初め

  • G20(8/6)でも消費増税言及せず

4)社会保障給付は先行して削減へ

  • 特養入居基準厳しく-「要介護3」以上に(8/14)
  • 大病院、初診料1万円を基準に値上げ検討(8/30)
  • 『高額療養費』見直し 所得に応じ負担増徹底(9/10)
  • 高所得者の介護保険の自己負担を15年度から見直しへ(8/4)

5)15年度の『財政健全化目標』達成には5兆円の増税必要(6/22)

  • 『消費増税』でも20年年度の黒字困難(8/1夕)

6)『大機小機』:『財政敗戦』を避けるために(9/7)

  • 成長促進は重要だが、『増税』と厳しい『歳出抑制』というパーツもなければ『財政敗戦』は避けられない。
  • 『財政再建』が必要なのは、行き詰った時に真っ先に被害を受けるのは『国民』だからだ。

トピックス

『国家財政』ABC-基礎編ー

1)『財政』とは

  • 政府の経済活動の収支。租税や公債などで民間から資金を調達、政府はこれを元手に国民生活の基盤となる諸条件の活動を行なっている。

  (注)1970年代から「大きな政府」に対する疑問が生まれ、「小さな政府」を目指す

     動きが現れ出した。

2)『財政』の三機能

  ①資産配分機能  ②所得再配分機能  ③経済の安定化機能

  (注)『財政』は以下の二つを通して経済を安定化することができると言われている。

    a)自動安定化機能(ビルト・イン・スタビライザー)

    b)裁量的財政政策(フィスカル・ポリシー

       ・・・不況期に「財政支出」を拡大したり、「減税」で景気を刺激する

3)『財政学』の歴史

 ①『官房学』・・・17~18世紀の『重商主義時代』に王室財政の収入増と管理のための技術論

 ②古典派財政学・・・『古典派経済学(自由な経済活動を主張)』の発展と共に「国家の機能」

          を以下の3つに限定すべきとした。

 ③19世紀半頃から・・・『所得格差』の拡大と共に、『福祉国家』への要請が高まり、

           『財政』の役割も拡大

 ④現代・・・R.A.マスグレイブの『財政理論』(1959年)で、一応の総括を見たと言われ、

      数理的・統計的手法が導入され理論の精緻化が進んだ。

4)『財政赤字』の問題点

 ①財政の硬直化・・・「利払い」等の増大で、「政策的経費」を減少させる

 ②財政の「持続可能性(サスティナビリティ)」に対する信任の喪失

 ③「負担」の先送りによる世代間の不公平の拡大

5)『租税』

 ①『租税』とは

  • 政府が『歳入の調達』を目標に、強制的に、何ら特別の対価なしに、他の経済主体から徴収する「貨幣」

 ②『租税』の種類

  a)『直接税』と『間接税』

   (注)『直接税』・・・法律上の「納税義務者」が税の負担者となる税

  b)『従量税』と『従価税』

  c)『国税』と『地方税

   (注)『租税』の性質

      『直接税』・・・累進課税が可能(垂直的公平)だが、脱税や所得隠し、

             景気に左右される、などの欠点がある

      『間接税』・・・公平で景気に左右されないが、『逆進性』の欠点がある

 ③『租税負担率』と『国民負担率』

  『租税負担率』・・・『国民所得』に対する『国税』と『地方税』を合わせた『租税収入』の割合

  『国民負担率』・・・『租税負担率』に『社会保障負担率』を加えたもの

  『潜在的国民負担率』・・・『国民負担率』+『財政赤字分』

 <参考>財務省ホームページより

     国民負担率(対国民所得比)の推移 : 財務省

     債務残高の国際比較(対GDP比) : 財務省

6)『財政健全化』への努力

  • 橋本内閣(1996~1998年)

   『財政構造改革法』・・・急激な景気変動と金融システムの不安で凍結

   『聖域なき構造改革』・・・歳出削減は進んだが、「社会保障費」が急増、

               改革は捗々しくなかった。

   2006年『経済財政運営と構造改革に関する基本方針』を閣議決定

          ・・・持続可能な財政制度を確立するため、「歳出削減」を徹底した上で、

            それでも対応できない場合は「歳入改革」で対応しようとした

           『歳出・歳入一体改革」が取り決められた。

  • 2009年・・・「歳出改革」の取り組みを継続すると同時に、国地方の大胆な「行政改革」

        を進めることになった。

  • 2010年

    『財政運営戦略』を閣議決定、以下の目標が決定された

      ①国・地方の「プライマリーバランス赤字」を遅くても2015年度までに

       「対GDP比」で半減、2020年度までに黒字化させる。

      ②2021年度以降において、国・地方の「公債残高」を「対GDP比」で

       安定的に低下させる。

      ③2011年度から13年度を対象とする以下の目標の『中期財政フレーム』を策定、

         イ)2011年度予算で新規国債発行は約44兆円を上回らないものとする

         ロ)「基礎的財政収支対象経費」を71兆円以下に、「国債発行額」を

           約44兆円以下に抑える

  • 2013年8月・・・『中期財政計画』を策定

    『中期財政計画』のポイント

        ①2015年度の財政赤字半減目標を維持

        ②新規国債発行額は14、15年度に前年度を上回らないよう努力

        ③地方の一般財源総額は14、15年度に13年度と同水準を確保

        ④20年度の財政赤字解消は税収増などで実現

        ⑤経済の重大な危機で目標達成が難しい場合は、機動的な財政政策を実施

7)『消費税』の歴史

 a)歴史

   1989年・・・『消費型付加価値税』として3%の『消費税』を導入、代わりに『物品税』

        は廃止

        野党四会派『消費税廃止法案』を提出

   1990年・・・政府『消費税見直し法案』を提出(2月)

        野党、『消費税廃止法案』提出(4月)

   1991年・・・与野党の合意成立

   1997年・・・税率を5%に引き上げ

 b)「消費税」が必要とされた背景

   イ)国民所得が上昇、『シャウプ税制(直接税中心で累進度がきつい)』が合わなく

     なった。

   ロ)「少子高齢化社会」の到来をひかえ、『社会保障』を賄う安定的な「歳入構造」が

     必要と考えられた。

   ハ)これまでの『消費課税』は奢侈性・便益性に着目、「個別間接税」の『物品税』で

     あり、色々なアンバランスがあった。

 c)当時、国会で議論されたこと

   ・「逆進性」、「低所得者」の負担

   ・事業者が、消費者に『消費税』の転嫁ができるか

   ・事業者の事務負担

   ・「便乗値上げ」が生じないか

   ・「景気」への影響

 

                             以上