8月定例会まとめ/ニュースの目(17)
石川直子です。
「国際経済について考える時、世界の『歴史』、そして各地域における『宗教』を無視することはできない」
ここ数年、先生は口癖のようにこう云われ、ユダヤの起源、イスラーム、道教などについて勉強されたことを定例会でお話しくださいます。目下、『哲学』についてまとめておられるとのこと。
今回は、日経『経済教室』に4回にわたり連載された『無極化する世界』について取り上げ、世界が大きく変化する中で、日本は、家計は、どのような考えを持って対処すべきなのかを考えました。
私たち以上に厳しい時代を生きるであろう子供たちが、何を柱にそれを乗り越えていくのか。改めて『哲学』を見直し、人間とは何かということを深く考えていく必要がありそうです。
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『ニュースの目(17)』―日本経済新聞2012年7月26日~8月10日朝・夕刊より抜粋―
■無極化する世界 『経済教室』(8/7~10)
1)国際秩序、『脱日米欧』一段と(五百旗頭 真 熊本県立大学理事長・前防衛大学校長)
- アメリカはイラク統治に苦しみ、“傷ついた超大国”となった。そして、中国やインド等、アジアの台頭にとって代わられるとの予測が広がっている。
- 国際経済問題は、G7が後退、G20が責任を身につけない状況で、効果的対処は困難を極めるであろう。
- 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を誇った80年代の後、「失われた20年」を経て、今日の日本の国際競争力は著しく低下。
2)東アジア、地域体制は強靭(白石 隆 政策研究大学院大学学長)
- 世界経済に占める新興国・途上国の比率は13%だったが、2010年には34%、17年には42%になるとの予想がある。
- 新興国の台頭で世界的な協調は非常に難しくなろう。
3)協調・強硬路線が並立(川島 真 東京大学准教授)
- 世界は多様な主体が自己の秩序観を主張する時代に突入するとの予想と、アメリカの指導力は低下するがEUや日本などの既存の秩序を重視する主体を加えてアメリカの指導力の優位を当面は維持できるという見方がある。
- 中国は「経済発展」を最大目標に掲げていたが、2006年には「主権と安全」を目標に加えてきている。
4)アメリカの指導性は失われず(ジョン・アイケンベリー プリンストン大学教授)
- アメリカが主張してきた『自由民主主義と資本主義』の文明は失われず、逆に拡大していると考えるべき。
- ただし、アメリカ等の古い先進国は、新興国と主導的立場を分かち合う必要に迫られるだろう。
<参考資料>世界の動き
1882年 独・墺・伊三国同盟締結
1894年 露仏同盟/1904年英仏協商/1907年英露協商
1914年 サラエヴォ事件、第一次世界大戦勃発(~1918)
1917年 ドイツ無制限潜水艦作戦、ロシア三月革命 ⇒ロシア帝政の崩壊
1917年 アメリカ、ドイツに宣戦布告(第一次世界大戦に参戦)
1917年 ロシア十一月革命/世界初の社会主義政権成立 ⇒レーニンの共産主義革命
1919年 パリ調和会議、ヴェルサイユ条約調印1920年 国際連盟発足(~1946)
1922年 ソヴィエト社会主義共和国連邦樹立
1929年 ニューヨーク市場の株価暴落、世界恐慌へ
⇒ドイツ『生存権』を求め、軍事膨張主義に
⇒英・仏は債務国に転落
1933年 ドイツでナチス政権成立/国際連盟脱退
⇒ケインズ主義で不況からの脱出に成功(注①) ⇒ルーズベルト、日独伊を病原体扱い
1939年 ドイツ軍ポーランド侵攻。第二次世界大戦勃発
1941年 日本軍真珠湾奇襲。米英、対日独伊宣戦布告
1942年 ミッドウェー海戦/1944年連合軍ノルマンティー上陸
1945年 5月ドイツ降伏。8月日本ポツダム宣言受諾
⇒世界の覇権はアメリカへ(注②)→イギリスの転落
⇒事実上の東西冷戦が始まる(注③)
1945年 国際連合誕生/世界の安全保障を記念し設立
1946年 東西冷戦の開始/世界を二分したイデオロギーの対立
1947年 インドの独立/列強の楔を断ち切る第三世界の台頭
1948年 第一次中東戦争/遺恨を残したイギリスの二枚舌
1949年 中華人民共和国建国/外と内の戦争が終結
1955年 アジア・アフリカ会議 ⇒第三勢力の誕生
1960年 アフリカの年/民族自決の実現
1963年 ケネディー米大統領暗殺される1
964年 アメリカ公民権法の成立/「人種差別撤廃」のうねり
1965年 ベトナム戦争/大敗北を喫したアメリカの干渉戦争
⇒戦費負担でアメリカの地位低下明白に
1969年 アポロ計画/人類初の月面着陸
1971年 アメリカ、金兌換停止(ニクソン・ショック) ⇒ドルの切下げ
1979年 イラン革命/イスラム世界が打ち出した独自路線
1985年 プラザ合意 ⇒円、マルクの大幅切上げ
1991年 ソ連崩壊/伝播していった東欧社会主義諸国の解体
→『自己責任』『規制緩和』が重視 →一方で『格差』『不平等』を拡大
1991年 湾岸戦争/テレビメディアを利用した新しい戦争
1993年 EU誕生/経済規模第一位となったヨーロッパ連合
1997年 アジア通貨危機
2001年 世界同時多発テロ/一国独裁となった大国の行方
(注①)ドイツ フォルクスワーゲンの育成、アウトバーンの拡大etc.
(注②)世界のGDPの62%、金の66%をアメリカが保持
⇒2009年の世界GDPシェアは24.4%(日本8.8%、中国8.6%)
cf:2009年のGDPシェア アジア29.4%、アフリカ2.1%、EU28.4%、中近東4.3%
(注③) 東側 1950年 中ソ友好同盟・相互援助条約→1980年に解消
1955年 ワルシャワ条約機構→1991年に解消
西側 1951年 日米安全保障条約、太平洋安全保障条約
1948年 米州機構発足
1954年 東南アジア条約機構→1977年に解消
<参考>大学開国(6/23~29)
- 英タイムズの2010年世界大学ランキングにおいて、東京大(22位→26位)、京都大(25位→57位)など有力大学が一斉に順位を下げ、上位200位の大学は11校から5校に激減。
<参考>『大人の知恵』とは
単に『倫理性の高い目標』を主張することではない。『倫理性の高い目標』に固執する主張は、子供の主張である。『大人の知恵』は、『目標』とともに『目標達成の過程』が用意されていることが不可欠で、『過程』の実効性・実現性によっては、『目標』も修正されなければならない。
■トピックス ・パート待遇改善への道(8/4)と『労働契約』のイロハ
以上